照りつける陽射しはなお眩しく、けれど、朝の空気や風の匂いに、ふと秋の気配を感じられる頃。
八月の二十四節気です。
八月の和風名月、「葉月(はづき)」の名は
木々が葉を落としはじめる「葉落ち月」に由来するともいわれています。
蝉しぐれが響く空の下で、夏の名残と秋の気配が、そっと入り混じるようなとき。
葉月はそんな、夏と秋のあわいの時間が流れていきます。
◆立秋(りっしゅう)8月7日頃
暦の上で秋が始まるとされる「立秋」。
実際の気候はまだ真夏のままですが、ふとした風のやわらかさや、空の高さに、どこか「秋」の気配が潜んでいます。
朝夕にはほんの少し、風が心地よく感じられるようになり、セミの鳴き声に混じって、ひぐらしの音が耳に残るようになるのもこの頃。
気づけば空模様も、雲が少しずつ秋めいて、白くやわらかな綿雲や、すっと伸びるすじ雲――
真夏の入道雲とは違った空の表情に、季節の静かな移ろいを感じられます。
◆処暑(しょしょ)8月23日頃
「処暑」は、暑さが峠を越え、やわらいでいくころ。
まだ日差しは強い日もありますが、夕暮れの風にははっきりとした変化が訪れます。
ツクツクボウシやコオロギの声が重なり、虫たちの音色が少しずつ秋の輪郭を描きはじめます。
川のせせらぎや、田んぼの水面を渡る風。
昼間の喧騒のなかに、時折すっと差し込む静けさが、心に涼を運んでくれるようです。
処暑を過ぎると、空気がさらりと軽くなって、
真夏の濃密な熱とは違った透明感が生まれてきます。
季節の奥行きを味わう
立秋や処暑の頃は、見た目にはまだ“夏”の景色が広がっていても、
よく目を凝らし、耳を澄ませてみると、
その奥に潜む「秋への入口」が、静かに佇んでいることに気づきます。
風の渡る音、草木の巡り、虫の声の重なり。
ささやかで愛おしい四季のうつろい、自然からの便りを、受け取ってみてください。