先日、私たちヒノキノヒのスタッフは、東京・檜原村で行われた「まるごと山開きツアー vol.3 森のパラダイシフト」に参加してきました。
主催は、檜原村の山で木を育て、伐り、街へと届ける
林業会社「東京チェンソーズ」さん。
“パラダイムシフト”という名がついた今回の山開きでは、森林体験の一言では収まらない、森と人との関係を改めて根っこから見直す時間が詰まっていました。
木を「一本まるごと」使いきる
東京チェンソーズさんの社有林
訪れた社有林はとても静かで澄んでいて、鳥の囀りや葉の擦れ合う音など、生き物の音だけが心地よくこだまする空間で、なんだか山全体が呼吸しているようでした。
樹齢約300年の銀杏の樹。苔むしている姿が美しかった
森や木に新しい価値を付与する活動を行なっている、東京チェンソーズさん。その取り組みのひとつである木を「一本まるごと」使うという考え方がとても印象に残りました。
スギ・ヒノキ・サワラの枝。
皮を剥き表情豊かになった枝たちは、いま活躍の場を広げている
林業では通常、伐採された木の先端や枝などの部分は流通に乗らず捨てられてしまうこともあるそう。しかし東京チェンソーズさんは、それらも含めて木を「一本まるごと」活かす流通のしくみをつくっています。
「せっかく人が植えて、育ててきた木だから、全部に価値をつけたい。」
木を植えたり、道を作ったりするのも必要最低限に手を加えるだけ。あとは自然の生命力を活かしている。
山に入らなければ聞くことのできなかった、きこりの皆さんの山へのまなざしや想い、そして実際に行われている取り組みの数々。お話を聞いていくなかで、そのひとつひとつが、「じゃあ、自分たちにできることは何だろう?」という問いとして響きました。
日本の森林の“今”に触れる
東京の38%が森林、そして檜原村に至っては約93%が森に覆われています。その中でも6割は、かつて人が植えた人工林。けれど、木は勝手に育つわけではなく、間伐や枝打ちといった“手入れ”があってはじめて、健やかな森になります。
今、日本の森林は年々蓄積量が増えている一方で、それを守り活かす“きこり”の数は減少傾向にあります。このミスマッチが、日本の林業の大きな課題となっています。
森を歩きながら、手入れされた林とそうでない林の違いを目にすると、その言葉がより深く胸に響きました。
「人が関わることで、森は巡り、美しい森になるんだ」ということに、改めて気づかされる時間でした。
森と人の"間"にあるもの
山腹にあるこの場所がほんとに気持ちよかった
ツアーの終盤には、東京チェンソーズ・吉田さん(左)と、東向山簗田寺の副住職・齋藤さん(右)によるトークイベントも。テーマは「森と信仰」。
「ここでの信仰とは、要は自分の心の拠り所。つまり暮らしの中で「拠り所」をみつけることと、「森」を掛け合わせることができれば、ぐっと森へのハードルや距離感が縮まるのではないかと思った。」 ——吉田さん
確かに現代人において、心の拠り所は至る所にある。そして私たちはその時間と行動をとても大切にしている。
そんな人の「信仰心」と「森」がかけ合わさったのなら、豊かさが生まれる未来しか見えない。
そして、齋藤さんのお話の中ではっとさせられたのが、森と街(人)の距離感についてのお話でした。
現代社会では、森と街のあいだにくっきりと境界線ができてしまっていて、「間(ま)」という思考を巡らせるための“余白”を感じる感覚が失われつつあるといいます。
本来、森との関わり方にはもっとレイヤーがあっていい。森を眺める、歩いてみる、関わってみる——誰もが、自分なりの関わり方をしていいのだと斎藤さんは語ります。
「"行"をすることが、拠り所を生む。つまり自らの行動によって生まれた経験を通してこそ、森が自分の大切な場となっていく。」 ——齋藤さん
森と街の間に、境界線を引かずに、余白と行動のレイヤーを入れていく。
そしてそのレイヤーこそが、現代に生きる私たちが、これから森とどう繋がっていくか、という課題を前進させるきっかけになっていくように感じました。
ヒノキノヒとしての、これからを考える
この「山開きツアー」を通して、私たちはたくさんの宿題や視点を持ち帰ることができました。
「知らない」が「知る」に変わるだけで、森や自然の見え方やつながり方は驚くほど変わっていく。山の中で交わした言葉や、目の前に広がる景色が、それを教えてくれました。
森と人がつながり循環していくなかで、ヒノキノヒはこれからどんな立ち位置で、どんなことができるのか。今回生まれたこの問いを、丁寧に見つめ直していきたいと思いました。
森と人をつなぐ、その一助に
東京チェンソーズさんが目指しているのは、
「美しい森林を育み、活かし、届ける」こと。
そしてそれは、人と森との新しい関係を提案することでもあります。
「森は、誰かのものじゃなく、みんなの場所であってほしい。」
そう語る彼らの姿勢に、ヒノキノヒも深く共感しました。
この日感じた森のぬくもりや、人の想いが、日々の暮らしのなかでも息づいてくれたら——。
そんな願いを込めて、これからもヒノキノヒは、「モノ」としての魅力はもちろん、その背景にある「コト」にも光をあてて。森と人とが自然なかたちで繋がっていく「きっかけ」となるようなブランドになれるよう成長していきたい、と改めて感じることのできる時間となりました。