立秋を過ぎても、まだ昼は夏の名残を感じる暑さが残りますが、朝夕にはかすかに涼しさが訪れはじめる頃。
九月の二十四節気です。
九月の和風名月、「長月(ながつき)」の語源には、夜が長くなる「夜長月」とも、あるいは稲の穂が長く実る「長月」とも言われています。夏の名残と秋の気配が交差し、思いに耽るような時間なのかもしれませんね。
◆白露(はくろ)9月7日頃
夜明けの頃、草もみじにひそかに宿る露。
それは、夏の蒸し暑さが静かにやわらぎ、秋の気配が少しずつ姿を現し始めたしるしです。
田畑の隅に広がる草叢が、銀色に輝くさまは、朝の静かな祝祭のよう。
柔らかな風がふわりと吹けば、露は一粒、二粒とこぼれ、ゆるやかな音を立てるかのようです。
そんな風景に、季節の分岐点をそっと教えられるような気持ちになります。
◆秋分(しゅうぶん)9月23日頃
昼と夜の長さがほぼ同じになる「秋分」。
空の青さも、どこか深く静かになっていく頃です。
午後の柔らかな光は、木々の葉を透かし、影さえも優しく描き出し、
夕暮れには、ひんやりとした風が窓辺を通り抜けます。
季節を告げる虫たちの声は、気づけば夕暮れの主役。
その声に耳を傾ければ、夏の音色がいつのまにか秋の調べへと変わっているのに気づかされます。
季節の狭間に佇む
この時季は、朝の散歩道で草に宿る露を見つけたり、夕暮れの影が少し長く伸びていることに気づいたり。
ふとした瞬間に、「秋が来ている」ことを感じられます。
耳を澄ませば、夜の虫の声はどこかもの寂しく、けれど優しく響いてきます。
夏と秋、その両方をまとったこの時季特有の空気の中で過ごすと、暮らしのリズムも自然とゆっくりに。
季節のうつろいを心静かに、つぶさに観察してみれば、うつくしい瞬きに出会い、今この季節がより愛おしく感じられます。